突然ですが、マイアミビーチ・ルンバという曲をご存知でしょうか。
曲名を聞いたことがない人でも、曲を聞けばきっとわかるでしょう。
これがそのマイアミビーチ・ルンバなのですが、なんでマイアミビーチ・ルンバかというと、この記事を書こうと思った時、すなわちファラリキビーチについて書こうと思った時に、この曲が思い浮かんだからです。
ではファラリキビーチとマイアミビーチが似ているのかとか、この曲から想起させられるような南国チックで賑やかでカオスな雰囲気があそこにあったとかというと、そういうことでもないのです。

この付近はシダ類の多い、いわゆるNZ的な自然とは打って変わって、乾燥していて、景色もアフリカのような無愛想で雄大な自然を思わせるものだ。
僻地極まりないため、道路も途中から砂利道に。車は4WDでもないし、オフロード仕様にもなっていないので、40km/h以下の低速で運転していく。
そんなのっそり走行で30分くらい進むと駐車場にたどり着いた。
ファラリキビーチはNZ南島の北西端に位置していて、我々は東側の湾「Golden Bay」を沿うように北上していったわけである。
余談だが、このゴールデンベイ周辺の街にはヒッピーが集まる街があって、そういった雰囲気はなかなか日本では出会えないものだった。
駐車場からビーチまでは片道20分くらいのトレッキングにが必要で、日没時間が迫っていたこともあって、足早に進んだ。

ファナラリキビーチにつくと、まず初めに靴を脱いだ。
その名の通りここは広大なビーチなんだけれど、本当に広大すぎるのと、ゆったりとした起伏が多いので、砂浜というより砂丘に近い。
DUNE。まさに砂の惑星を放浪するようだ。
時刻は21時前。
サマータイムの影響と、日が沈む西海岸側にいることで、まだ西陽がさしている。


夏と言ってもNZでは日が差していないと寒くなる。
寒がりの私は服を四枚くらい重ね着していた。
素足を埋める砂はもうひんやりしている。
歩くにつれて踵がジンジンしてくる。
砂は極めて細かく砕かれ抜かれた岩や貝を含むため、美しく白く、西陽が差すと浮かび上がるように滑らかな表面を描写する。
海から風が水飛沫を乗せて吹く。
風を受けた砂丘には美しい風紋ができていて、そこに素足を踏み込んでいくと模様は台無しになっていくわけだけれど、その罪悪感が心地よい。



日没前とはいえ、人がちらほらいた。数組ほどだろうか。
人と岩の対比が残酷なまでに現実感を失わせる。

その岩を目前にした時、潮は引いていた。
干潮。
花崗岩や石英といった非常に硬い岩から形成されたそれは、アーチ・ロックと言われ、何千万年も前に地殻変動によって地上に現れた。
タスマン海からの無情な波と激烈な偏西風によって、軟弱な箇所は根こそぎ削り落とされ、また拍車をかけるように氷期と間氷期の繰り返しで、海面変動が絶え間なく発生、削る位置を変える波に多方面から殴られ続けた。
気が遠くなるような、いや、到底気など保てないほど途方もない年月をかけて洗礼を受けたこの岩は、削られた崖を露出させ、残された柱でアーチ状の岩塔となったのだ。

この岩の前では「幻想的」なんていう言葉は陳腐なおもちゃのような言葉でしかないだろう。
岩まで歩いて行けてしまうような気がしたが、目測より遥か遠くにあるということを身体は理解している。
こういった思いはたまに自分の中で発生する。
何かものすごいものを目前にした時、手が届きそうな、そこまで辿り着けそうな感覚に陥るんだけれど、そこは現実から切り離されていて、いってはいけないということを身体が知っているという矛盾だ。
神秘といったら随分安っぽい言葉だが、そういった場所は案外そういうものなのかもしれない。


日はもう暮れようとしているが、空にはまだ僅かなピンクが残っている。
海風に押されて引き返す。こうして歩く自分たちはまるで難民のようだ。
ある種の難民のみがここに辿り着ける。


ここはWindows10のデフォルトの壁紙に使われていたところらしいということを行った後で知った。
既視感の正体はここからかと後になって納得した。
メルカリ
パソコンの画面で見ても「おー、綺麗だな」とかってレベルの感想しか抱かないだろうが、実際に行ってみると、画像と現実は当然全くの別物だということを痛感する。

冒頭のマイアミビーチ・ルンバの話にここにきて戻る。
この曲の内容を簡単にまとめると、
キューバを目指して出発したのだけれど、出立からすぐにあったマイアミビーチでルンバを教えられて過ごしていたら、肝心のキューバには行けくなった。でもルンバは踊れたし、キューバっぽい感じは楽しめたからオーケー。
というものだ。
めちゃくちゃだし、曲もルンバっぽい作りになっているが、あくまでアメリカ人が幻想の中で描いて作った全てが「イメージ」の曲だ。
つまりキューバとマイアミビーチの間には絶対的なズレがあって、そのズレそのものを愉快にのせた曲だと私は思っている。
ファラリキビーチで私が感じたのはまさしく“ズレ”だったと思う。
孤立した岩とイノセントな砂丘。
刻まれた素足の痕跡と風紋。
Windows10と西海岸の日没。
波の音とルンバ。
ズレてる。
どうしようもないズレはルンバがきっと埋めてくれる。
ファラリキビーチ・ルンバ。
Everybody dance the Rhumba in Wharariki Beach!!!




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